彼に、携帯を覗かれた。
一緒に入る?って聞かれたけど「ううん、私先に入るね」って言ってお風呂に入った瞬間、「あ、携帯机の上に置きっ放し」と思った。まさか…ね、と思いながら上がった瞬間、パチン!と携帯のとじる音。彼の携帯は二つ折りじゃない。バイト先で知り合って、去年の夏に一度だけ2人で飲みに行ったMさんからの「久しぶりに飲みに行こやぁ」っていうメール。Kくんからの会おうよっていうメール。結局面倒で曖昧な返事のまま行ってないけど、どうしよう見られた…ってそればかり思った。
なんで勝手に携帯見たの!?って一方的に攻める気はなかった。彼が不安な気持ちがわかってたから。本当にいたいほど純粋に私を想っていることも。
知らんぷりを装って、静かに部屋に入っていくと、しばらくしてから「わか…怒らないで聞いてくれる?」と言いにくそうに「携帯見ちゃった…」って打ち明けた。「Mさんって誰?」と。俺に内緒で2人で飲みに行かないで、と言ったあと、見るんじゃなかった…とつぶやいた。彼の腕の中で、ごめんね、しか返せなかった。